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なぜ今ロマンポルノなのか? プロジェクトリーダーが語る邦画シーンへの挑戦

オリコン 12/18(日) 8:40配信

なぜ今ロマンポルノなのか? プロジェクトリーダーが語る邦画シーンへの挑戦

“一般の映画”として通用するか?リブートでのロマンポルノ新作『ジムノペディに乱れる』(行定勲監督)(C)2016日活

 1971年に製作が開始され、かつての邦画シーンに多大な影響を与えながら、その土台を支えてきた成人映画レーベル“日活ロマンポルノ”。ストーリー重視の“大人のエロス”が楽しめる低予算のロマンポルノは、新人監督にとってはまさに自由な表現ができる、試行錯誤と挑戦の場だった。ここで腕を磨き、作家性と個性を身につけ、その後世に出た大物監督も多い。そんなロマンポルノの生誕45周年でのリブートプロジェクトが始動している。今なぜリブートするのか、そこには現在の邦画シーンへのメッセージがあるのか? そのねらいについて、プロジェクトリーダーの永山雅也氏、サブリーダーの高木希世江氏、そして西尾沙織プロデューサーに話を聞いた。

【映像】“脱ぎ損にはしたくない”女優たちが演じた新作ロマンポルノの現代女性の性

◆映倫での再審査もきっかけ。“一般映画”としてのロマンポルノの挑戦

――ロマンポルノといえば、作品的なクオリティだけでなく、邦画シーンにおいて果してきた役割の大きさも高く評価されています。そんなロマンポルノをなぜ今の時代にリブートさせようと考えたのでしょうか?
【永山雅也】 まずきっかけとして大きかったのは2012年、日活100周年を記念して行ったロマンポルノの特集上映でした。かつては男性に向けて作られていた成人映画であったロマンポルノは、アダルトビデオの登場もあり、時代の流れのなかで消えていきました。ところが、その特集上映には若い世代の方がたくさん来てくださって、それまでとお客さんの層が変わってきている、製作された当時とは違った見方をされているということを実感したんです。そうであれば、ロマンポルノというジャンルを復活させる余地があるのではないのかと。それと、昨年ロマンポルノを映倫で再審査していただいたところ、公開当時はR18+だったものが、今の基準だとR15+、もしくは作品によって制限がつかない作品も出てきました。そういったこともあり、もう一度、ロマンポルノというブランドを見直してみようということになったわけです。

――そこから新作を制作しようということになったと。
【永山雅也】 多様な人材を輩出したロマンポルノを、当時とまったく時代の異なる今、あえてやるのはどうなんだということを、社内でも喧々がくがくと議論しながらも、周年事業と位置付け、部署を横断する形でプロジェクトが発足しました。そのなかで、旧作の再ブランディングには、新作が必要ではないかという事になりました。ただ、旧作のロマンポルノはあくまで成人映画であり、われわれが旧作と同じことを目指しているのかというと、それは違います。今回のリブートは、“一般の映画”としてロマンポルノが通用するのかという挑戦でもあります。そういった映画がお客さんに響くのかどうかはひとつのチャレンジだと思っているので、次につなげるためにも成功させたいと思っています。

――かつてのロマンポルノは新人監督たちの試行錯誤と挑戦の場でもありましたが、今回は塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲という第一線で活躍する著名な映画監督が集まりました。
【永山雅也】 これは一般の映画でも同様なのですが、“脱ぐ”ことを前提に女優をキャスティングするのは、CM契約の問題などもあり、とても難しくなっています。ですから、今回のロマンポルノリブートでは、まず監督に柱を置くことに決めました。過去の偉大な先輩方が作った作品と肩を並べるものを作るためには、この5人の監督たちのようなクリエイターの力を借りるしかないだろうと考えたのです。そして、男性だけでなく女性も観られるロマンポルノという立ち位置で映画を作ろうとしたときに、プロジェクトに参加するそれぞれのセクションの中心に女性スタッフを置きました。女性ならではの視点を入れながら作っています。
【西尾沙織】 キャスティングに関していうと、監督の名前は大きかったですね。リブートといっても、ロマンポルノへの出演というと昔の作風のイメージがあると思いますから。そういうなかで、「この監督の作品で主演をやれるなんてまたとない機会だからやってみたい」と言ってくださる方も多かったです。もちろん女優さんによっては「下着姿までなら」という方もいらっしゃいましたが、その場合でも、お話をしていくと女優さん自ら「事務所を説得しますから大丈夫です。脱げます」とおっしゃっていただいて。皆さん覚悟を持って来てくださったので、そのあたりはスムーズでしたね。
【永山雅也】 逆に言えば、われわれの側も、女優さんが脱ぐことに値する作品でなくてはならないというプレッシャーは常にあります。

◆“脱ぎ損にはしたくない”という女優の意識

――ロマンポルノにとって“脱ぐ”ことは必須ですからね。
【西尾沙織】 皆さん、“脱ぎ損にはしたくない”という言い方をよくされていて。ポスターひとつとっても、誰に向けて、どのような作品として売っていくのかということをすごく気にされていました。監督のスケジュールの都合で、ほかよりも先行して撮った作品があったのですが、そのときのキャスティングでは、何回も募集の呼び込みをかけたり、事務所に直接お声がけをしたりしたこともありました。プロジェクトの最初の方はなかなか苦労しました。

――これがヒットすれば新たなシリーズも続くということでしょうか?
【高木希世江】 はい。今年は45周年なので、次の50周年に向けて継続的にやっていきたいと考えています。日活は配給部門がありますから、制作段階で公開の仕掛けを考え、二次利用の営業部門とも連携して1作品ずつ大切に取り組むことができます。クリエイターの方々や役者さんたちにその点も信頼していただけたらと思います。

――かつてのような、新人監督たちを育てていく場になっていくこともあるのでしょうか。
【永山雅也】 今回はすでに実績名のある監督の方々を柱にしましたが、今後そういった方向性を持つことは十分あると思います。今回、行定監督の『ジムノペディに乱れる』と中田監督の『ホワイトリリー』は釜山国際映画祭で上映され、キム・ギドク監督が行定組のプレミア上映に来てくれて話したのですが、「ロマンポルノは知っていたけど、初めて観た。すごく美しかったし、おもしろかった。自分もやりたい」と言ってくださいました。ほか海外映画祭は、スイスのロカルノ国際映画祭やフランスのエトランジェ映画祭、スペインのシッチェス映画祭、マカオ映画祭などに出品しますが、海外の監督など映画関係者からも興味を持ってもらっているようです。実際に作品が完成したことで、われわれがやろうとしていることが具体的にうまく伝わるようになりました。今後は国内の監督だけでなく、海外の監督、国内外の新人監督や、女性監督などと一緒に製作をしてみたいと思っています。

◆日活100%出資でオリジナル脚本のみ。邦画シーンへのアンチテーゼも?

――確かに今回の5本は力作ぞろいでした。
【高木希世江】 それぞれの監督の個性が発揮された作品となり、テンションが高いですよね。
【永山雅也】 今回のリブートは、リメイクでもなく、原作ものでもない。基本的にはオリジナル脚本ということでお願いしました。5人の監督はみなさん、その趣旨に賛同し、前向きに捉えてくださいました。同じ条件、同じ制作費、撮影日数もほぼ同じという横並びの条件を踏まえて5作品を観たときに、それぞれまったく違った形で作品が出来上がったのがおもしろかったですね。ロマンポルノは製作委員会での製作ではないので、そういう意味では監督にとっては作りやすい環境でもあったのかもしれません。日活としても、他社の出資を入れずに100%日活で作るのは久々のことです。
【高木希世江】 東宝さんの『シン・ゴジラ』みたいなものですね(笑)。
【永山雅也】 ある意味、両作とも昭和と平成をつないで作ってきたシリーズですからね。今回は100%自社出資なので、われわれが考えるようにハンドリングしながら作っていくことができたので、そこは良かったです。

――日活さんの100%出資で、監督たちは原作ものではなくオリジナル脚本で製作する本プロジェクトは、昨今の邦画メジャーシーンへのアンチテーゼの側面があるのではないかと感じるのですが。
【永山雅也】 監督たちにもわれわれにも、確かにそういう想いはあります。ただ、それがすべてかというとそうでもなくて。日活が持っているロマンポルノというレーベルを活用して、今の時代のお客さんが望むものを作り出そうというアプローチは、ある種、原作ものと同じでもあると思います。大仰に今の映画界がどうとか意見するつもりはありません。
【高木希世江】 そこに一石を投じることになればいいという気持ちはありますし、そう受け取っていただけるのはありがたいことです。「レビューを読んで星とり評を見て、大多数の意見を確認しに観に行く」という人たちばかりだと、映画の存在意義って何なのだろうという事にもなってしまうと感じています。ただ、だからといって特定の人たちだけに評価される作品ばかりを作り続けることはできないので、需要と供給のバランスをとりながらやっていかなくてはならないところだと思います。
【永山雅也】 われわれがやるのは、原作がすごく人気があるとか、メディアで大々的にプロモーションできるという映画ではありません。でも、人間の心理として気になるものだったり、その本質みたいなものどう描くかというところで、人々の興味関心を掘り起こす挑戦をしています。そのサイズに合わせて、どれくらいの予算でどれくらいのプロモーション費をかけてやったら最大化できるだろうということに知恵を絞りながらやっています。かつてのロマンポルノという場に集まった監督やスタッフは、みんなそういう想いで製作をしていたと思います。ですから、これを続けていければ、5年後10年後には先におっしゃっていただいたような評価をいただけるのかなと思います。
(文:壬生智裕)


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161216-00000351-oric-ent
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